高速で移動すると物質は縦方向(進行方向)に√(1-v2/c2)倍「ローレンツ収縮」します。この仕組みを詳説します。
物質は、光速に近づくほど加速し難くなります。そして、光速を超えることは出来ません。光速に達すると、粒子はそれ以上動かなくなり質量が∞となった様に振る舞います。これは、加速器の実験で実証済みです。
これを相対性理論で「質量増加」と言います。但し、実際に質量が増加する訳ではありません。静止時に比べてv[m/秒]で移動する物質は動かし難くなるので、「まるで質量が増えたようだ」と表現します。
質量増加には、@横質量増加とA縦質量増加の2種があります。
v[m/秒]で移動する物質は、横方向(進行方向に向かって上下左右方向)には、同じ力を加えても静止時に比べ√(1-v2/c2)倍しか動かなくなり、@1/√(1-v2/c2)倍質量が増加した様に振る舞います。
また、縦方向(進行方向)には、静止時に比べ{√(1-v2/c2)}3倍しか動かなくなり、A1/{√(1-v2/c2)}3倍質量が増加した様に振る舞います。
※図では縦と横の表現が逆になっています。いずれ訂正いたします。
一方、電子は原子核の周りを高速回転し、その遠心力と原子核の電磁力による引力との釣り合う一定距離を保っています。
原子が高速で移動すると、電子は上記のとおり質量が増加した様に振る舞うため、回転し難くなりそれに掛る遠心力は弱まります。
一方、v[m/秒]で原子が移動すると、電子を引く原子核の電磁力も弱まります。電磁力は、電荷を帯びた粒子間を電磁波(光)が光速で往復することで生じます。
その2つの粒子がvm/秒で移動しながら電磁波を交換すると、電磁波の往復に要する時間は、横方向で1/√(1-v2/c2)倍・縦方向で1/(1-v2/c2)倍となります。
※この詳細は高速移動に伴う光の縦と横の往復距離の変化を参照下さい。
ですから、電磁波が1回往復するとaの力の電磁力が生じるとすると、v[m/秒]で移動する時生じる電磁力の力はB横方向で√a(1-v2/c2)・C縦方向でa(1-v2/c2)となります。つまり、原子核の電磁力の強さはB縦√(1-v2/c2)倍・C横(1-v2/c2)倍となります。
では、v[m/秒]で原子が移動すると、電子に掛る遠心力F1と電磁力F2のバランスが静止時に比べどう変化するか見て行きましょう。
遠心力F1=m×v2/r {m=質量(単位:s)、v=回転速度(単位:m/s)、r=回転半径(単位:m)}
電磁力F2=k0×e2/r2 {k0=比例定数:8.987600×109Nm2/c2、e=電荷(単位:cクローン)、r=距離(単位:m)}
です。
この様に、電子は遠心力F1(m×v2/r)=電磁力F2(k0×e2/r2)となる一定距離上を回っています。
先ず、縦方向から見て行きます。初速度が0の時、質量が2倍になると、同じ力を加えても速度は1/2倍となります。ですから、電子の質量が1/√(1-v2/c2)倍となった様に振る舞うので、電子の速度は√(1-v2/c2)倍となります。したがって
遠心力F1={m/√(1-v2/c2)}×{v√(1-v2/c2)}2÷r=√(1-v2/c2) mv2/r
と静止時の√(1-v2/c2)倍になります。一方、電磁力はBより
電磁力F2=√(1-v2/c2) k0e2/r2
と静止時の√(1-v2/c2)倍になります。
※v=v0+at=v0+(F/m)tです。初速度v0の時、横方向は
m’=m/√(1−v02/c2)なので、v= v0+[F/{m/√(1−v02/c2)}]t=v0+{√(1−v02/c2)F/m}t
です。また初速度v0=0の時、横方向は
m’=mなので、v= 0+(F/m)t
です。
したがって、vで運動する物体は同じ運動エネルギーを加えても、√(1−v02/c2)倍の速度しか上げられません。つまり、v0で移動する物体は横方向に1/√(1−v02/c2)倍質量が増加した様に振舞います。縦方向はご自身で計算なさってください。私が初速度を0にしたのは、説明を分かり易くするためです。
この様に、横方向では遠心力F1も電磁力F2も√(1-v2/c2)倍となり釣り合うので、電子そのまま静止時と同じ軌道上を回ります。
次は、縦方向を見て行きます。
電子の質量が{1/√(1-v2/c2)}3倍となった様に振る舞うので、電子の速度は{√(1-v2/c2)}3倍となります。したがって
遠心力F1={m/√(1-v2/c2)}3×{v√(1-v2/c2)3}2÷r=√(1-v2/c2)3 mv2/r
と静止時の√(1-v2/c2)3倍となります。
一方、電磁力はCより
電磁力F2=(1-v2/c2) k0e2/r2
と静止時の(1-v2/c2)倍となります。
√(1-v2/c2)<1なので、遠心力F1(飛び出そうとする力)<電磁力(原子核に引かれる力)となり、電子は原子核に引かれより小さい軌道上を回る様になります。
では、その軌道半径は幾らでしょうか。結論から言うと、静止時の軌道半径の√(1-v2/c2)倍となった時、遠心力F1と電磁力F2は釣り合います。
角運動量保存の法則(角運動量=mvrが一定となる)より、電子の軌道半径が√(1-v2/c2)倍になると、回転速度は1/√(1-v2/c2)倍になります。ですからこの時の
遠心力F1={m/√(1-v2/c2)}3×{v√(1-v2/c2)3×1/√(1-v2/c2)}2÷r√(1-v2/c2)= m×v2/r
で静止時と同じ値となります。
一方、この時
電磁力F2= (1-v2/c2)k0×e2/√(1-v2/c2)}2r= k0e2/r2
で静止時と同じ値となります。
静止時にはm×v2/r= k0e2/r2なので、電子が√(1-v2/c2)倍小さな軌道を回ると、遠心力F1=電磁力F2となり釣り合うことが分かります。
つまり、原子がv[m/秒]で移動すると、電子は縦方向では原子核の電磁力に引き付けられ√(1-v2/c2)倍小さな軌道を回ります。横方向に変化はありません。
ですから、原子自体が縦方向に√(1-v2/c2)倍収縮し、物質は「ローレンツ収縮」します。
これをローレンツ収縮の「kothimaro解法」と呼びます(2016/07/10pm15:51)
この「ローレンツ収縮」は、マイケルソンとモーリー(以下MMと称します)の実験結果を説明するものとして、ローレンツにより提唱されました。
MMは、地球の進行方向(縦方向)と上下左右方向(横方向)に、鏡により光を片道11m往復させました。
この装置に何も変化がなければ、地球の速度をvm/秒とすると、縦方向に往復した光@は22/(1-v2/c2)m・横方向に往復した光Aは22/√(1-v2/c2)mの距離を進みます。ですから、縦往復した光@と横往復した光Aは同時には戻らない筈でした。
しかし、実験の結果光@と光Aは同時に戻りました。
そこで、ローレンツは物質がエーテルに押され縦方向に√(1-v2/c2)倍収縮したと考えました。そうすれば、MM装置自体が縦方向に√(1-v2/c2)倍収縮するので
縦方向の光@の往復距離=22√(1-v2/c2)/(1-v2/c2)m=22/√(1-v2/c2)m
横方向の光Aの往復距離=22/√(1-v2/c2)m
となり、光@と光Aは同時に戻ることが出来ます。
ところが、幾らエーテルを探しても発見出来ず、「ローレンツ収縮」は証明されませんでした。しかし、上記のとおり、電子に掛る遠心力と電磁力の変化から考えると、「ローレンツ収縮」を上手に説明することが出来ます。
アインシュタイン博士も自著で、高速移動する物質が「ローレンツ収縮」すると考えることは、MM実験の結果を説明する妥当な解決策であると述べられています。